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我が心の芝居小屋さん江

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丸の内ピカデリーの客席はガラガラだった。まるで僕が一番夢中になって歌舞伎を追い掛けていた時代の3階席のように・・・。『我が心の歌舞伎座』の上映時間はやたら長い。途中休憩の入る映画を見たのは、何年振りのことだろう? こんなに長いのに、何故あれが入らない、何故これを見せてくれない!そんな気持ちがグルグル駆け巡る。でもあの古色蒼然たる建物のあちこちが映るたびに、僕の40年余りの思い出が、愚痴を彼方へ押しやってしまう。
穴だらけの床、すり減った敷居、きしむ音が聞こえてきそうな階段、淡々と仕事をこなしていく裏方さん、客席からは決して見えないのに顔を拵え衣装を纏った3階さん等々。どれひとつ欠けても歌舞伎座たり得ない絶対要素が、歴史ある酒蔵の壁に宿る糀のように、ただ静かに、何の恩賞も脚光も求めず、時を刻んできたのだ。
大幹部や花形役者の一挙手一投足を食い入るように見つめた若い頃、睡魔と闘いながらしがみついたこと、たくさんのハプニング、たくさんの感激、たくさんのサヨナラ・・・。歌舞伎座が教えてくれたひとつひとつが、フラッシュバックのように甦る。
ありがとう歌舞伎座、さようなら歌舞伎座。

by go-go-shiosenbe | 2011-04-04 00:34 | 拠ん所なく歩く日々

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