ヴィヴィアン・マイヤーが探せない

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 彼女は家政婦や家庭教師や乳母をして生計を立てていた。次々雇い主が変わるのは、任期満了しただけじゃなさそう。「虐められた」「叱られた」「ぶたれた…」、とうに大人になった彼女が担当した子供たちが口々に言う。そんな人が何故家政婦なんか出来たんだろう?そもそも、その選択肢しかなかったのだろうか? どう見ても人嫌い、子供嫌い、そして男への嫌悪…どう見ても家政婦失格じゃないか。
 自分の時間が出来ると彼女は街へ出た、愛用のカメラを首から下げて。時代遅れのダブダブ服を着た、ガタイの大きな女性は、界隈では有名だったに違いない。首から下げた二眼レフが、ひとつも大きく見えないのだ。
 彼女の写真はどれも素晴らしかった。笑顔の奥の不安、貧困の奥の幸せ、泣き顔の向こうにある信頼…喜怒哀楽をクールに、ある時は容赦なくフィルムに焼き付けた。
 でも生涯、一度も公表されることはなかった。夥しいネガと未現像のフィルムは15万カットにも及ぶという。それを街のオークションで手に入れた青年がその存在を発見した時、既に彼女は亡くなっていた。ゴミ箱の缶詰を漁ることもあったくらいの暮らしの中で…。
 ヴィヴィアン・マイヤーは謎の人。を見終わっても、その謎は解決しないどころか、僕の頭の中をぐるぐる回り続ける。でも、美人だよね。

 『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』は、渋谷イメージフォーラムでね…。

by go-go-shiosenbe | 2015-10-15 14:06 | 拠ん所なく歩く日々

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